午後、空は突然暗くなり、予報通り激しい雨が降り始めた。
その中に混じって、ポトリ、ポトリと音を立てて何かが降ってきた。
最初は、雹かと思った。
でも、よく見ると、それは違った。
透明で丸い飴が降ってきた。地面に落ちるたびに、カラン、カランと軽い音を立てて、転がっていく。

「…飴?」

誰もが考えたことがあるだろう。
もし雨が飴だったらどうなるんだろう
その思いが、現実になった瞬間だった。

街中の人々は驚きながらも次々と飴を拾い始め、喜びの声があちこちで響く。
「こんなことがあるなんて!」
笑顔を浮かべながら、手に取った飴を嬉しそうに見せ合うその姿は、まるでお祭りのようだった。
「飴が降るなんて、夢のようだ!」
その光景を見ながら、私は少し微笑んでしまった。

でも、その後の展開は予想外だった。

急に、空が晴れた
晴れ間が広がり、飴は嘘のように止んだ。
一見、完璧な晴天が広がったかのように見えたが、地面には残された飴のシミが広がり、どこか不快なべたつきを感じさせた。
足元がぬるぬるして、歩くたびに靴が絡むような感触が広がる。

その時、私と周囲の人々の表情が変わった。
最初は飴を拾って嬉しそうにしていた人々が、次第に足元を気にし始め、歩調が遅くなっていった。
「あれ、どうしようこれ…」
一人が呟き、他の人たちもそれに気づき始めた。
地面には溶けた飴の跡が残り、どこか気持ち悪くなっていた

晴れた空を見上げても、飴の甘さは消えてしまい、ただべたべたした現実が広がっていた。
「あんなに嬉しかったのに、結局何も変わらないじゃないか…」
その言葉が頭をよぎり、私は足元を見つめながら歩いた。

周りの人々も、最初の楽しさはどこへやら、今やそれぞれ足早にその場を去り、晴れた空に反して気まずい空気が漂っていた
「飴が降ってきたなんて、結局はこれだけか」
そんなことを感じながら、街は静かに元の風景に戻っていった。

あの飴の雨は、ただの一瞬の奇跡だった
甘い香りは消え、足元のべたつきだけが残った。
その後、何も変わらなかったことを実感しながら、私はまた日常へと戻っていった。