薄明かりの中で目を覚ました。
その瞬間、何も見えないわけではない。ただ、白い光が視界を埋め尽くしているだけだ。
それも、ただの明かりではない。無機質で冷たい、何かの反射が目に刺さるように感じられる。

目をこすり、辺りを見渡してみるが、何も変わらない。
街の音も、鳥の声も、何も聞こえない。ただ静寂だけが広がっていた。

「ここは一体、どこなんだ…?」

その問いが脳裏に浮かぶが、口に出すことさえできない。声も出ない。
まるで、声を出してはいけない場所に来てしまったような気がした。
手を伸ばしてみても、触れるものがない。
ただ、白い霧のようなものが、辺りを覆っているだけだ。

――ふと、背後で気配を感じた。
振り返ってみるが、そこにも誰もいない。
しかし、なぜか後ろにいる誰かの存在を感じ取ってしまう。
その正体はわからないが、確かにここには何かがいる。

動かないでいることが正しいのだろうか?
それとも、動き出すべきなのだろうか?
一歩踏み出してみると、足元が冷たく、重い。
地面は、しっとりと湿っているようだが、触れても何の感触もない。
ただ、湿気が漂うだけで、そこには意味が見当たらない。

「なんだ…この場所」

歩きながら、何度も自分に問いかける。
けれど、答えはいつまで経っても返ってこない。
白い光は、僕の思考を遮り、ただ周りを無意味に照らすだけ。

気づけば、また足元が動かなくなっていた。
白い闇が目の前に立ち塞がり、僕はただ立ち尽くすことしかできなかった。
まるで、何かに囚われたような感覚に囚われる。

――その時、目の前に影が現れた。
それは、はっきりとした形をしているわけではない。
ただ、白い闇の中に浮かび上がった、ぼんやりとした存在。

「あなたは…誰?」

声が出た。
自分で驚きながらも、問いかけてみるが、影は何も答えない。
ただ、じっと僕を見つめているだけだ。

そして、ふっと風が吹いた。
その瞬間、僕は目の前の影が消えたことに気づいた。

ふと、心に閃いた。
「この場所…もしかして、僕自身なのか?」

その問いが胸を締め付けた。
ここはどこでもなく、自分の内面だった。
外の世界から隔離された空間で、僕はただ虚無に包まれていたのだ。

僕は、もう一度目を閉じた。
その瞬間、全てが静まり返り、周囲の白い光がゆっくりと消えていく。
静寂の中で、ただ一つ確かなことは、僕がここに「閉じ込められていた」ことだった。

そして、最後に一つだけ思った。

「僕が消えたら、ここから出られるのだろうか?」

その問いを残したまま、僕は何もできずに消えていった。