理科室の水槽に、それはいた。

「えっ、これって…火、ついてない?」

水中に浮かぶのは、小さなトカゲのような生き物。
尾の先から小さな火を灯していて、水の中でも燃えているのが不思議だった。

先生は言った。

「名前はサラマンダー。特別に文部科学省から預かってる。今日から、君たちのクラスで飼育する」

最初は戸惑った。
でも、世話をしていくうちに、私たちは夢中になった。
水槽を掃除したり、温度を調整したり、好きな餌を探したり。
サラマンダーは、火を尾に灯したまま、いつも静かに私たちを見ていた。

火が大きくなる日もあれば、小さくなる日もあった。
それはまるで、クラスの気持ちと呼応しているようだった。

ケンカした日、火はほとんど消えかけていた。
みんなで謝った翌日、火はふわっと明るくなった。

そしてある朝、先生が言った。

「サラマンダー、そろそろ戻さなきゃいけない」

全員が黙った。

「どこに?」

「山の奥の保護区に。人間のそばにいすぎると、あいつの火が弱ってしまうんだ」

送り出す日は、雪が降っていた。
私たちは列をなして歩き、火を灯した小さなケースを手渡した。
誰も泣かなかった。でも、言葉も出なかった。

最後にケースを開けたとき、サラマンダーは一瞬こちらを見て、尾をふった。

…火が、きれいだった。