「いや、俺は戦わないからな。絶対に。」

レンは断言した。異世界転移して三日。剣術も魔法も才能ゼロ。チュートリアルのスライムにすら逃げられた彼が見つけた唯一の希望――それが、木陰で眠っていたフクロウだった。

「お前、強そうだよな?」

「……ホー」

もちろんフクロウは何も言わない。でもレンは勝手に決めた。「この世界では、フクロウが勇者なんだ」と。願望の塊だった。

そこからが早かった。レンは街で“最強の防具屋”を探し回り、「フクロウ用の鎧を作ってほしい」と土下座。鍛冶屋の爺さんは最初こそ首をかしげたが、レンが提示した大金に目を輝かせた。

「できたぞ、アーマード・フクロウ一号じゃ!」

翌朝、銀の鎧をまとったフクロウは、レンの肩に乗ってキラキラと陽を反射していた。通りすがる人々がざわめく。

「かっこいい!」
「なんて貴族的なフクロウ!」

満足気なレンは、冒険者ギルドに向かい、依頼を受けた。討伐対象は「畑を荒らす暴走イノシシ」。依頼ランクは最低のE。

現地に着くや否や、フクロウが飛び立つ。

「いけ!アーマード・フクロウ!」

フクロウは……一目散に逃げた。

「おい!どこ行くの!?」

木の陰に隠れて震えるフクロウと、それを抱えて一緒に震えるレン。イノシシが現れた瞬間、二人は叫んだ。

「帰るぅぅぅう!!」

その後、彼らは「戦わずに依頼をどう回避するか」の研究に没頭した。演技で気絶。穴掘って隠れる。お金を払って他の冒険者に頼む――。

勇者でも魔法使いでもない、怠け者と臆病フクロウの異世界ライフは、今日も爆笑とともに続いていく。