この山の寺には、筋金入りの修行オタクの住職がいる。

滝に打たれるどころか、わざわざ自分で滝を掘り、
座禅に飽きたら逆さ座禅、
断食に至っては、食べないどころか空気まで節約し始めた
村人たちはあきれてこう呼んだ。

「修行バカ住職」

だがある日、事件は起きた。

村はずれで盗賊が暴れだしたのだ。
警察もまだ到着しない。村人たちは震え上がった。

そこに、袈裟をバサリとはためかせ、住職が現れた。
ただし、地面を歩かず、空を飛んで。

「あっ、ほんとに飛んでる!」
誰かが叫んだ。

住職はふわりと空を滑空し、盗賊の頭上に着地すると、
静かに手を合わせ、こうつぶやいた。

「悪事をすれば、仏罰が下る……のだ!」

次の瞬間、盗賊たちはひとり残らず、地面に叩き伏せられていた。
力でもぎ取ったわけではない。
住職の鍛え抜かれた肉体が放つ、あまりの威圧感に、勝手に倒れたのだ。

「……すげぇ」
「いや、なにこれ怖ぇ」

村人たちは呆然としながらも、拍手喝采を送った。

帰り道、空中をふわふわ泳ぎながら、住職はぽつりと言った。

「次は宇宙に行けるかもしれませんなあ」

彼の修行は、まだ終わりそうになかった。